中高年の転職で固定残業代のある求人を見るときは、固定残業代の有無だけで良し悪しを決めず、基本給・固定残業の時間数と金額・超過分の支払い・実際の残業時間を確認します。固定残業代は違法と決まっている制度ではありませんが、条件があいまいな求人は、入社後の給与や働き方を判断しにくいため注意が必要です。
固定残業代とは?
固定残業代とは、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ決めた時間分の残業代を毎月の給与に含めて支払う仕組みです。「みなし残業代」「定額残業代」と書かれている場合もあります。
たとえば「月給30万円、固定残業代5万円を含む。30時間分」と表示されていれば、基本給と固定残業代を分けて示した求人です。実際の残業時間が30時間を超えた場合は、通常、超過分の残業代が別途支払われる契約である必要があります。
ただし、求人票に「固定残業代を含む」としか書かれていない場合は、何時間分なのか、いくらなのか、超過分が支払われるのかを確認しないと、給与条件を正確に比較できません。
中高年の転職で固定残業代を確認する理由
中高年の転職では、提示された月給だけでなく、定年までの働き方や収入の安定性も含めて判断する必要があります。固定残業代が大きい求人は、見かけの月給が高くても、基本給が低く設定されている可能性があります。
特に、次の条件に影響することがあります。
- 賞与や昇給の計算で使われる基本給
- 退職金の算定基準
- 残業時間と実際の拘束時間
- 定年後の再雇用時の給与
- 体力や通院、家族の介護などと両立できるか
固定残業代そのものが問題なのではなく、固定残業を前提にしないと生活できない給与設定になっていないか、また、提示された時間分の残業が常態化していないかを見極めることが重要です。
求人票で最初に確認する4項目
1. 固定残業代が何時間分か
「固定残業代を含む」という記載だけでなく、対象となる時間数を確認します。「20時間分」「45時間分」などの時間数が書かれていない場合は、応募前または面接時に確認しましょう。
時間数が大きいほど、毎月その時間の残業を前提にした給与である可能性があります。ただし、固定残業時間が多いことだけで違法と判断はできないため、実際の平均残業時間と合わせて確認します。
2. 固定残業代の金額
固定残業の時間数だけでなく、金額も必要です。たとえば「月給35万円」とだけ書かれていて、その中に固定残業代が含まれている場合、基本給がいくらなのか分かりません。
確認したい表示は、次のような内容です。
- 月給または年収の総額
- 基本給
- 固定残業代の金額
- 固定残業代に含まれる時間数
- 固定残業時間を超えた分の支払い
3. 超過分が別途支払われるか
実際の残業時間が固定された時間数を超えた場合に、超過分の割増賃金が支払われるかを確認します。「超過分は別途支給」と明記されている求人は、条件を確認しやすい表示です。
「何時間働いても追加の残業代は出ない」「固定残業代があるので残業代は一切支払わない」といった説明を受けた場合は、求人票や労働条件通知書の記載と照らし合わせ、慎重に判断してください。
4. 何の割増賃金を含むのか
固定残業代が、通常の時間外労働だけを対象にしているのか、深夜労働や休日労働も含むのかを確認します。深夜労働や法定休日労働には、通常の時間外労働とは異なる割増賃金が関係するためです。
求人票で対象が明確でない場合は、「固定残業代は時間外労働の何時間分ですか。深夜勤務や休日勤務の割増賃金は別計算ですか」と具体的に尋ねると確認しやすくなります。
月給の高さではなく基本給で比較する
固定残業代のある求人とない求人を比べるときは、月給の総額だけでなく、固定残業代を除いた基本給を並べます。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 月給 | 固定残業代や各種手当を含む総額か |
| 基本給 | 固定残業代を除いた金額はいくらか |
| 固定残業代 | 金額と何時間分か |
| 賞与 | 基本給を基準にするのか、別の計算方法か |
| 昇給 | 基本給が上がるのか、手当だけが変わるのか |
| 残業実態 | 月平均の残業時間と繁忙期の時間数 |
たとえば、A社が「月給30万円、基本給25万円、固定残業代5万円」、B社が「月給27万円、基本給27万円」であれば、月給だけではA社が高く見えます。しかし、賞与や昇給が基本給を基準にする場合、年収の比較結果が変わる可能性があります。
固定残業代の金額を計算例で確認する
求人票の固定残業代が適切な金額かを確認するには、基本給、所定労働時間、固定残業時間などが必要です。求人票だけでは正確な計算ができない場合もあります。
仮に、基本給が24万円、1か月の所定労働時間が160時間、固定残業が20時間分だとします。単純化した計算では、時間単価は次のようになります。
24万円 ÷ 160時間 = 1,500円
法定時間外労働の割増率を25%として計算すると、20時間分の固定残業代は次の金額が目安になります。
1,500円 × 1.25 × 20時間 = 37,500円
これは説明用の計算例であり、実際の金額は会社の所定労働時間、割増率、対象となる労働時間、給与規程によって変わります。固定残業代がこの計算例より高いか低いかだけで、求人の適法性や良し悪しを決めることはできません。
実際の残業時間を面接で確認する
固定残業代の時間数よりも、実際の残業時間が少ないとは限りません。求人票に「固定残業20時間分」とあっても、平均残業時間が20時間なのか、40時間なのかで働き方は大きく異なります。
面接では、次のように具体的に質問します。
- 「直近の月平均残業時間は何時間ですか」
- 「繁忙期は月に何時間ほど残業しますか」
- 「固定残業時間を超える社員はどの程度いますか」
- 「定時後に残ることが多い曜日や時期はありますか」
- 「休日出勤や深夜勤務はありますか」
「平均」だけでは実態が分からない場合があるため、通常月と繁忙期を分けて聞くのがポイントです。回答があいまいな場合は、入社後の働き方を判断する材料が不足していると考えます。
中高年が特に確認したい勤務条件
定年と再雇用後の条件
求人票の給与が定年まで続くとは限りません。定年年齢、再雇用制度の有無、再雇用後の雇用形態や給与の目安を確認します。
固定残業代が再雇用後も付くのか、業務内容や勤務時間が変わるのかも、長く働く予定なら重要です。再雇用後の条件が求人票にない場合は、採用担当者に確認してください。
役職や管理職扱いの有無
「管理職候補」「店長候補」「責任者候補」といった求人では、入社後に役職が付く時期と、役職手当や残業代の扱いを確認します。役職名が付いていても、法律上の管理監督者に該当するとは限りません。
管理職扱いを理由に残業代の説明が省かれている場合は、対象となる役職、勤務時間の管理方法、休日や深夜勤務の扱いを確認しましょう。
体力や通院との両立
固定残業代がある求人では、毎月一定時間の残業を前提にしている場合があります。通院、家族の介護、睡眠や体力面の事情がある場合は、「残業できるか」だけでなく、何時まで働くことが多いか、急な残業があるかを確認します。
「残業少なめ」という表現だけで判断せず、月平均の時間、繁忙期、始業前の準備、持ち帰り業務の有無を具体的に聞くことが大切です。
注意したい固定残業代の求人表示
次のような表示は、条件を確認してから応募を判断しましょう。
- 月給だけが示され、基本給が分からない
- 固定残業代を含むのに、時間数と金額が書かれていない
- 「残業代込み」とだけ書かれている
- 超過分を支払うかどうかが不明確
- 固定残業の時間数が大きいのに、実際の残業時間が説明されていない
- 賞与や昇給の計算基準が分からない
- 面接で求人票と異なる給与条件を提示される
これらは、直ちに違法や悪質と断定できる事情ではありません。ただし、給与と勤務時間を比較するための情報が不足しています。応募や入社を決める前に、書面で条件を確認してください。
応募前から入社前までの確認手順
- 求人票を保存する。給与、固定残業代、勤務時間、休日などが記載された画面やPDFを保存します。
- 基本給と固定残業代を分けて確認する。月給の内訳、固定残業の時間数、金額を確認します。
- 実際の残業時間を質問する。通常月、繁忙期、休日出勤、深夜勤務の状況を聞きます。
- 労働条件通知書を確認する。入社を承諾する前に、給与の内訳、勤務時間、残業代の扱い、契約期間などを書面で確認します。
- 求人票と書面の違いを確認する。条件が違う場合は、どちらが正式な条件なのかを採用担当者に確認し、納得できるまで承諾しません。
口頭で説明された内容は、後から確認しにくいことがあります。特に固定残業代の時間数や超過分の扱いは、メールなど記録が残る方法で確認すると安心です。
固定残業代のある求人が向いている場合、慎重に見る場合
| 判断 | 目安 |
|---|---|
| 応募を検討しやすい | 基本給、固定残業の時間数と金額、超過分の支払い、実際の残業時間が明確 |
| 条件を比較して判断 | 固定残業代は明確だが、賞与・昇給・繁忙期の勤務実態が分からない |
| 慎重に確認する | 月給は高いが、基本給や固定残業代の内訳が不明 |
| 承諾を急がない | 求人票と面接時の説明が違う、超過分の支払いを説明しない |
固定残業代がある求人でも、仕事内容、勤務地、休日、給与の内訳、実際の残業時間に納得できれば、転職先の候補になります。一方、月給の高さだけを理由に選ぶと、想定より基本給が低かったり、残業を前提とした働き方だったりする可能性があります。
まずは求人票で「基本給」「固定残業の時間数・金額」「超過分」「実際の残業時間」の4点を確認し、不明な点を労働条件通知書で確かめてから判断しましょう。







