40代・50代の定着率を調べるには、まず「どの集団が、いつまで残った割合か」を確認します。定着率の計算方法や対象年齢は企業ごとに異なるため、求人票に数字がなければ、企業の採用担当者への確認、公開資料の確認、入社後の在籍状況に関する口コミの照合を組み合わせる必要があります。
40代・50代の定着率とは何か
定着率とは、ある時点で在籍していた人が、一定期間後も在籍している割合です。たとえば、40代で入社した10人のうち、1年後に8人が在籍していれば、1年後の定着率は次のように計算します。
定着率=一定期間後も在籍している人数÷基準時点の人数×100
ただし、「40代・50代の定着率」と書かれていても、次の条件が分からなければ数字だけでは比較できません。
- 入社時の年齢を基準にしているか、現在の年齢を基準にしているか
- 40代と50代を分けているか、まとめているか
- 入社後6か月、1年、3年など、どの期間で計算しているか
- 正社員だけか、契約社員やパートも含むか
- 自己都合退職、定年退職、転籍などを退職者に含めるか
- 対象人数が何人か
そのため、単に「定着率95%」と表示されているだけでは、40代・50代の状況まで分かるとは限りません。
最初に確認するべき3つの条件
40代・50代の定着率を調べるときは、数字を見る前に「対象」「期間」「計算方法」をそろえます。
1. 対象者を確認する
「40代・50代」が、入社時の年齢なのか、現在の年齢なのかを確認します。たとえば、40代で入社して現在50代になった人をどちらに含めるかで、結果は変わります。
確認時には、次のように質問すると具体的です。
- 「40代・50代という年齢は、入社時点の年齢ですか」
- 「40代と50代の定着率は分けて集計していますか」
- 「正社員のみの数字ですか」
- 「対象者は何人ですか」
2. 定着した期間を確認する
1年後の定着率と、3年後の定着率は別の指標です。短期間の定着率が高くても、長期的に在籍しているとは限りません。
転職先を比較する場合は、少なくとも「入社後1年時点」か「入社後3年時点」かをそろえて見ます。期間が違う数字を並べて、どちらの会社が定着しやすいと判断することはできません。
3. 分母と分子を確認する
定着率には、計算のもとになる人数が必要です。たとえば「定着率100%」でも、対象者が2人なのか100人なのかで、数字の受け止め方は変わります。
可能であれば、次の人数を確認します。
- 基準時点の対象人数
- 一定期間後も在籍している人数
- 期間中の退職者数
- 集計対象から除外した人数と、その理由
企業が公表している資料で調べる
企業の公式サイト、採用ページ、求人票、統合報告書などに、従業員の定着状況が掲載されている場合があります。ただし、全社の離職率や平均勤続年数だけでは、40代・50代に限定した定着率は分かりません。
確認する場所は次のとおりです。
- 採用情報の「数字で見る会社」などのページ
- 求人票や募集要項
- 人的資本に関する情報
- 有価証券報告書や統合報告書
- 会社説明会の資料
- 中途採用向けのFAQ
資料に「中途入社者の定着率」と書かれていても、年齢別の数字とは限りません。「40代」「50代」「中高年」「シニア」などの区分があるかを確認してください。
定着率と混同しやすい指標
| 指標 | 分かること | 40代・50代の定着率との違い |
|---|---|---|
| 離職率 | 一定期間に退職した人の割合 | 定着率と近い関係にありますが、対象期間や計算方法が必要です |
| 平均勤続年数 | 従業員が平均して何年勤務しているか | 年齢別や中途入社者の定着状況までは分かりません |
| 在籍人数 | ある時点の従業員数 | 過去に入社した人がどれだけ残ったかは分かりません |
| 中途入社者の定着率 | 中途採用者が一定期間後に在籍している割合 | 40代・50代に限定されているか確認が必要です |
たとえば、平均勤続年数が長い会社でも、40代・50代の中途入社者が定着しているとは限りません。反対に、平均勤続年数が短くても、近年採用した中高年層の定着率が高い可能性はあります。
求人票や採用担当者への質問で確認する
年齢別の定着率が公開されていない場合は、応募前や面接時に採用担当者へ確認します。単に「定着率は高いですか」と聞くより、対象と期間を指定したほうが具体的な回答を得やすくなります。
質問例は次のとおりです。
- 「直近3年間に40代で中途入社した方は、現在何人在籍していますか」
- 「50代で入社した方のうち、1年後も在籍している割合は分かりますか」
- 「40代・50代の中途入社者について、入社後1年と3年の定着状況を教えてください」
- 「退職者数を計算するとき、定年退職や契約期間満了は含めていますか」
- 「私が応募する職種・勤務地に限った定着状況は確認できますか」
回答が「会社全体の数字」なのか、「応募する職種や事業所の数字」なのかも重要です。部署や勤務地によって、仕事内容、勤務時間、管理者、転勤の有無が異なるためです。
自分で定着率を計算する方法
企業から対象人数と在籍人数を教えてもらえた場合は、同じ条件で定着率を計算できます。
- 基準時点を決めます。例として「2023年4月に40代で入社した人」とします。
- 基準時点の対象人数を確認します。
- 1年後や3年後など、確認したい時点を決めます。
- その時点で在籍している人数を確認します。
- 「在籍人数÷基準時点の人数×100」で計算します。
仮に、40代で入社した人が12人、そのうち3年後も9人在籍していた場合、計算は「9÷12×100」で、3年後の定着率は75%です。これは説明のための計算例であり、特定企業の実績を示すものではありません。
ただし、入社後に休職している人を在籍者に含めるか、転籍者をどう扱うかなどで結果が変わります。計算する前に、在籍の定義を確認してください。
口コミや転職体験談は補助資料として使う
転職サイトの口コミや体験談から、40代・50代が実際に働いているか、入社後の役割や退職理由を確認できることがあります。ただし、口コミは投稿者や投稿時期が限られており、会社全体の定着率を計算できる資料ではありません。
口コミを見るときは、次の点を確認します。
- 投稿者の年齢層と雇用形態
- 在籍していた職種や勤務地
- 入社時期と退職時期
- 複数の投稿に共通する内容か
- 現在の制度や組織にも当てはまる情報か
1件の退職体験だけで「40代・50代が定着しない」と判断することはできません。公式に公表された数字と、複数の体験談が同じ傾向を示しているかを分けて考えます。
公的統計で分かることと分からないこと
公的統計では、年齢別の就業状況、転職者数、離職に関する統計などを確認できる場合があります。ただし、これらは業界全体や労働市場の傾向を示すもので、特定企業の40代・50代の定着率を直接示すものではありません。
公的統計を使う場合は、次の条件をそろえて読みます。
- 調査対象が全国か、地域別か
- 年齢区分が40代・50代と一致しているか
- 正社員など雇用形態が一致しているか
- 調査年と、転職を検討している時期が近いか
- 定着率、離職率、転職率のどれを示す統計か
業界全体の統計は応募先の背景を知る参考になりますが、企業選びでは、応募する会社・職種・勤務地に近い情報を優先してください。
調べた数字を比較するときの注意点
40代・50代の定着率を会社同士で比較するなら、少なくとも「年齢の基準」「入社後の期間」「雇用形態」「職種」「勤務地」「対象人数」をそろえます。
たとえば、A社が「40代・50代の1年定着率」、B社が「中途入社者全体の3年定着率」を公表している場合、数字をそのまま比較することはできません。
数字が比較できない場合は、定着率だけで順位を付けず、次の情報も合わせて判断します。
- 採用された年齢層と人数
- 同年代の在籍者がいるか
- 役職や担当業務の期待値
- 定年年齢と再雇用制度
- 給与や評価制度が年齢・経験に合っているか
- 残業、夜勤、転勤、体力面の負担
- 入社後の研修や業務引き継ぎ
回答が曖昧なときの判断方法
企業が年齢別の定着率を公表していないこと自体は、定着率が低いことの証拠ではありません。一方で、質問に対して対象人数や期間を示さず、「長く働けます」「中高年も活躍しています」といった説明だけの場合は、定着率の数字としては確認できません。
判断するときは、情報を次の3段階に分けると安全です。
- 確認できた情報:対象、期間、人数、計算方法が明示された数字
- 参考情報:会社全体の離職率、平均勤続年数、口コミ
- 未確認情報:年齢別の人数や期間が不明な「定着率が高い」という説明
最初に行うことは、応募先へ「40代・50代の中途入社者を対象に、入社後1年または3年の在籍状況を確認できるか」と質問することです。回答が得られない場合は、公開資料、求人内容、同年代の在籍状況、複数の体験談を分けて確認し、定着率だけで結論を出さないようにします。







